StemStudio

Multiband Compressor — マニュアル

Essential Studio Suite / VST3 / Windows 64-bit


これは何か

音を 低・中・高の3帯域に分けて、それぞれ別のコンプレッサーで潰すプラグインです。

シングルバンドのコンプは、キックが鳴るたびにボーカルも一緒に押し下げます

(いわゆる「ポンピング」)。帯域を分けておけば、

低域が暴れても中域は無傷です。逆に「中域だけ落ち着かせたい」も同じ理屈でできます。

バンドは3つです。4でも5でもなく3なのは、**クロスオーバーが1つ増えるたびに

位相を揃える相手が1つ増える**ためで、そして人が言葉にする不満は

だいたい「低域が」「声が」「上が」の3つに収まるからです。


インストール

  1. ZIP を展開する
  2. mbcomp.vst3 フォルダごと、次の場所へコピーする

```

%LOCALAPPDATA%\Programs\Common\VST3

```

  1. DAW を起動して再スキャン

アンインストールはこのフォルダを削除するだけです。レジストリには何も書きません。


パラメータ

クロスオーバー(パネル上部)

ノブ範囲説明
Low/Mid50 Hz 〜 2 kHz低域と中域の境目
Mid/High500 Hz 〜 15 kHz中域と高域の境目

上下の境目が近づきすぎないよう、内部で 1.2 倍の間隔を保ちます

片方をもう片方に押し当てても交差しません。

各バンド(3列とも同じ6つ)

ノブ範囲説明
Thresh−60 〜 0 dBここを超えた分を潰す
Ratio1.5:1 〜 20:1(8段)超えた分をどれだけ圧縮するか
Attack0.1 〜 300 ms潰しはじめる速さ
Release10 ms 〜 3 s戻る速さ
Makeup−12 〜 +12 dBそのバンドだけの音量補正
SoloOff / Onこのバンドだけを聞く

さらに全体の Output(−18 〜 +18 dB)。

初期値は3バンドで違います(意図的です)

AttackRelease
Low30 ms300 ms
Mid10 ms150 ms
High3 ms80 ms

低域を速いアタックで追うと、ベースの波形そのものを追いかけて歪みます。

高域を遅いアタックにすると、捕まえるべきサ行が終わってから動きます。

3バンドを同じ値で出荷するのは、「使う前に設定が要る製品」を出すことです。


Solo は「他をミュートする」だけです

Solo は別の信号経路ではありません。他の2バンドを黙らせているだけです。

これは仕様というより約束です。**3バンドを1つずつソロにして足すと、

ソロなしの音に戻ります**(実測 −140 dBFS の残差 = 実質ゼロ)。

つまり ソロで聞いた音が、そのまま合成後にも入っています

ソロ用に別処理を持っているプラグインでは、これは成り立ちません。

Solo を On にしたまま保存しても状態は残ります。書き出し前に確認してください。


表示

クロスオーバーのノブの下にある帯が帯域ストリップです。

横軸は 20Hz〜20kHz の対数で、2本の境界線がクロスオーバー、

3つの区画が Low / Mid / High です。

各区画の上から下りてくるカーテンがその帯域のリダクションで、

深いほど強く効いています。数値も区画の中に出ます。

上端の数字がクロスオーバー周波数、下段が帯域名と現在のリダクションです。

この表示は「どれだけ効いたか」と「分割がどこか」を同時に答えます。

どの帯域が何を掴んでいるかは、まずここで確認してください。


使いかた

マスターのグルー(まとめる)

3バンドとも Ratio 2:1、Thresh は各バンドが 2〜3 dB 動く程度、Makeup で戻す。

動いている量は「表示」の帯域ストリップに出ます。

各帯域の上から下りてくるカーテンがその帯域のリダクションで、数値も帯域の中に

出ます。3バンドとも 1 dB も動いていなければ、その設定は何もしていません。

この表示は分割がどこにあるかも同時に示します(横軸は 20Hz〜20kHz の対数、

境界線が2つのクロスオーバー)。どの帯域が何を掴んでいるかは、

まずここで確認してください。

低域だけ掴む

Low/Mid を 150 Hz、Low バンドだけ Ratio 4:1 / Thresh −30 dB / Attack 20 ms、

中高域は Thresh を 0 dB のまま(=何もしない)。

ベースとキックの暴れだけを抑え、声と上は素通しです。

シングルバンドのコンプでこれをやると、必ず声も一緒に下がります。

「刺さる上」だけ抑える

Mid/High を 4 kHz、High だけ Ratio 3:1 / Attack 1 ms / Release 60 ms。

De-Esser より広い帯域に効きます。サ行だけなら De-Esser のほうが速いです。

バンドを止めたいとき

Thresh を 0 dB にしてください。バンドごとの On/Off ノブはありません。

圧縮していないバンドは通過するだけで、その透明さは ±0.1 dB で測ってあります

(下記)。スイッチを付けても、何も足さないスイッチにしかなりません。


仕様

項目
フォーマットVST3 (64-bit Windows)
レイテンシ0 サンプル(最小位相)
バンド数3
分割方式Linkwitz-Riley 4次(24 dB/oct)
対応サンプルレート44.1 / 48 / 88.2 / 96 / 176.4 / 192 kHz
内部演算64-bit 浮動小数点

実測値

項目実測
全バンド無圧縮時の合成応答の平坦性0.0000 dB(許容 ±0.1)
同 @48 / 96 / 192 kHzいずれも 0.0000 dB
バンドソロの帯域外阻止量(Low / Mid / High)120.3 / 41.8 / 148.9 dB
3バンドを個別にソロして足した結果とソロなしの差−140.0 dBFS
静特性と理論値の最大誤差0.065 dB(許容 ±0.5)
バンド間の独立性(60Hz 大入力時の High の動作量)0.000 dB
CPU負荷(3バンド全て圧縮中)リアルタイムの 0.66 %

全文は qa/mbcomp_v0.1.0_report.md(開発リポジトリ)にあります。

「平坦」なのは振幅であって波形ではありません

Linkwitz-Riley の和はオールパスです。振幅は完全に平坦に戻りますが、

位相は回ります。分割して足したものが元の波形とビット一致することはありません

(それを求めるなら、そもそも帯域分割コンプは使えません)。

低域だけは、上側クロスオーバーのオールパス等価を余分に通しています。

これがないと3分割の合成は平坦になりません。実測で、この整列を外すと

800 Hz で 1.193 dB 波打ちます。入れると 0.000 dB です。

遅延はバンド間で同じです

3バンドとも IIR フィルタだけを通り、先読みは使っていません

バンドごとに違う遅延が付いて合成時にコムフィルタになる、

というマルチバンドの典型的な事故は原理的に起こりません。

レイテンシは全体で 0 サンプルです。


よくある質問

Q. バンドの On/Off はどこですか

A. ありません。Thresh を 0 dB にすれば、そのバンドは何もしません。

Q. スネアの音が変わって聞こえます

A. クロスオーバーがスネアの帯域を割っている可能性があります。

Low/Mid を 150 Hz 以下、または 500 Hz 以上へ動かしてみてください。

位相は回るので、跨いだ素材では「芯の位置」が変わって聞こえます。

Q. ソロで聞いた音と、全部鳴らしたときの音が違います

A. 設計上は違いません(実測 −140 dBFS)。違って聞こえるなら、

隣のバンドとの足し算が変わったのであって、そのバンド自体は変わっていません。

Q. 3バンドでは足りません

A. 2台重ねてクロスオーバーをずらす手はありますが、位相は2回転します。

4バンド以上が必要な作業なら、そもそも分割ではなく Dynamic EQ が向いています。

Q. Dynamic EQ とどちらを使うべきですか

A. 「帯域ごとにダイナミクスを作り直す」ならこちら。

「特定の周波数が鳴ったときだけ削る」なら Dynamic EQ です。

Dynamic EQ は帯域を分割しないので位相が回りません。



試用と ライセンス

初回使用から 31日間、すべての機能が使えます。

期間が終わると、プラグインは読み込まれ、設定も残ったまま、音を素通しにします

(名前の横に TRIAL ENDED と出ます)。**セッションの途中で音が消えたり、ノイズが

入ったりすることはありません。**

ライセンスは15種すべてに共通です。入力するには、どれか1つのプラグインで

「i」ボタン → Paste licence key(キーをクリップボードにコピーした状態で)。

ライセンス・連絡先

同梱の licenses/ を参照してください。

不具合報告・要望は README.txt の連絡先へ。

通知やアップグレード勧奨の画面は入れていません。今後も入れません。