Gate / Denoise — マニュアル
Essential Studio Suite / VST3 / Windows 64-bit
これは何か
ノイズゲートとデノイザを1枚のパネルに載せたものです。
この2つは、同じ質問に対する別々の答えです。
ゲートは「音符と音符の間」にあるものを消し、デノイザは「音符の下」にあるものを消します。
互いの仕事はできません — ゲートは伸ばしたボーカルの上に乗ったヒスを取れませんし、
タムの隙間を黙らせるのにスペクトル処理は不向きです。
信号はデノイザ → ゲートの順に通ります。逆ではありません。
ゲートの検波器は「聴き手が実際に聞く信号」で判断すべきで、
ヒスが残ったまま検波すると、閾値を無音ではなくヒスの上に置くことになります。
そうなると設定を決めているのは音楽ではなくノイズです。
インストール
- ZIP を展開する
gate.vst3フォルダごと、次の場所へコピーする
```
%LOCALAPPDATA%\Programs\Common\VST3
```
- DAW を起動して再スキャン
アンインストールはこのフォルダを削除するだけです。レジストリには何も書きません。
ゲート
| ノブ | 範囲 | 説明 |
|---|---|---|
| Thresh | −80 〜 0 dB | ここを超えたら開く |
| Range | −80 〜 0 dB | 閉じたときにどこまで下げるか |
| Hyst | 0 〜 12 dB | 閉じる閾値を、開く閾値より何dB下に置くか |
| Look | 0 / 1 / 2 / 5 ms | 先読み。レイテンシが変わります |
| Attack | 0.05 〜 50 ms | 開ききるまでの時間 |
| Hold | 1 〜 500 ms | 閾値を下回ってから閉じはじめるまで |
| Release | 5 ms 〜 2 s | 閉じきるまでの時間 |
Hysteresis がこのプラグインで一番重要なノブです
閾値が1つしかないゲートは、**その付近で1dB揺れる信号を相手にすると、
揺れるたびに開閉します**。これがチャタリングで、ゲートに対する不満として
最も多いものです。
このゲートは閾値を2つ持ちます。開くのは Thresh、閉じるのは Thresh − Hyst です。
1dB揺れる程度では、開く条件と閉じる条件の両方は満たせません。
実測: 閾値ちょうどで±1dB揺れる信号(3秒・揺らぎ4Hz)に対して、
Hysteresis 3dB で開閉1回(=最初に開いたきり)、
Hysteresis 0dB では24回でした。
どれだけ揺れるかはテイクの性質なので、隠し定数ではなくノブにしてあります。
Range は「閉じるかどうか」ではなく「どこまで下げるか」
−80 dB が既定で、これは実質ミュートです。ただし
−12 dB 程度しか下げないゲートのほうが「何も起きていないように聞こえる」
ことは多く、多くの場合それが目的です。
Attack と Release は「レンジを渡りきる時間」です
ゲインはdBの直線で動きます。1次系(指数)ではありません。理由は測定で分かりました:
- dB領域の1次系は、レンジ−80dBから開くと2時定数後でもまだ10.8 dB下です。
Attack 0.5ms の設定でドラムの頭が 1.06 dB 欠けました。ノブは0.5msと言い、
ゲートは5ms動いていたことになります
- リニアゲインの1次系は下限に漸近するので、実際に閉じきる時間が
「どれだけ深く下げるか」に依存します。同じ Release がRange −12dBと−80dBで別物になります
一定レートならどちらも起きません。Attack と Release はレンジによらず同じ意味で、
フェードは漸近ではなく到達します。
先読みと Attack のどちらでもトランジェントは守れます
既定は Look 0ms / Attack 0.2ms で、レイテンシ0サンプルです。
実測でドラムの頭2msのピーク欠損は 0.000 dB。
先読みを入れると検波は遅延前の信号で走るので、
トランジェントが到達する時点でゲインは既に上がっています。
先読みはレイテンシ報告を変える=ホストが遅延補正を組み直す操作なので、
オートメーションで描くものではなく段階式にしてあります。
デノイザ
| コントロール | 範囲 | 説明 |
|---|---|---|
| Denoise | Off / On | ONにするとレイテンシが 1024 サンプル増えます |
| Learn | Off / On | ノイズだけの区間で押す |
| Reduce | 0 〜 30 dB | 1ビンあたりの最大減衰量 |
| Smooth | 0 〜 100 % | ビンをフレーム間で繋ぐ量 |
さらに全体の Output(−18 〜 +18 dB)。
Learn は必ず「音楽が入っていない場所」で押してください
これが唯一の使い方です。再生を止めた無音ではなく、
ルームトーン・エアコン・ヒス・カウント前の空白のような、
「消したいものだけが鳴っている」区間で押します。
学習中も音は通り続けます — ボタンを押している間だけ無音になるプラグインは、
そのボタンが存在する唯一の用途に使えません。
Learn をONにすると、それまでのプロファイルは破棄されます。
学習したフレーム数とプロファイルのレベルはパネル下部に出ます。
自動学習にしていないのは意図的です。何が鳴っているかを知っているのは人間だけで、
勝手に学習するデノイザは音楽を覚えます。
減衰量はノブの値どおりには下がりません
Reduce の20dBは「1ビンあたりの下限」であって、全体の低減量ではありません。
スペクトル減算は雑音より上に出ている成分を残すので、
広帯域で測った低減量は必ずノブの値より小さくなります。
実測: 定常ノイズに対して Reduce 20dB 設定で 13.45 dB の低減。
同時に、ノイズより30dB上にある1kHzのトーンのレベル変化は −0.030 dB でした。
消したいものが減って、残したいものが動いていない、というのがこの数字の意味です。
Smooth はミュージカルノイズのためのノブです
スペクトル減算をビンごとに自由にやらせると、**ビンがフレームごとに出入りして
キラキラした付帯音**になります。これがミュージカルノイズです。
Smooth はビンを「1つ前のフレームの自分」に繋ぎます。減衰量を少し犠牲にして、
この付帯音を消すノブです。実測で、Smooth 0% と 90% では
ビンゲインのフレーム間変動が 4.37 倍違います。
Reduce を上げて水音的なアーティファクトが出たら、先に Smooth を上げてください。
表示
上の帯は入力と出力を同じdB軸に並べたものです。上のバーが入ってきた音、
下のバーが出ていく音で、2本の差がそのまま削っている量です。
下のバーが色付きなのはゲートが開いているあいだだけです。
縦線が2本あります。右の明るいほうが Thresh(開く水準)、左の暗いほうが
Thresh − Hyst(閉じる水準) で、あいだの帯がヒステリシス窓です。
この帯の中では、ゲートはいまやっていることを続けます — 開いていれば開いたまま、
閉じていれば閉じたまま。バタつく(チャタリング)ときは、この帯が狭すぎます。
左端のランプは開閉そのものです。
使いかた
タムやスネアのかぶりを取る
Thresh はかぶりの上・叩いた音の下 / Range −60 dB / Hyst 3 dB /
Attack 0.2 ms / Hold 60 ms / Release 200 ms
キックでタムのゲートが開いてしまうときは、DETECTOR の HPF を上げてください。
それは設定が悪いのではなく、ゲートが間違ったものを聞いているのです。
Listen を押すと検波器が聞いている音がそのまま出るので、耳で合わせられます。
会話・ナレーションのノイズ
エアコンの区間で Learn → Reduce 10〜14 dB / Smooth 50%。
そのうえでゲートを Thresh −45 dB 程度・Range −20 dB くらいの浅い設定で足すと、
「無音が不自然に真っ黒になる」のを避けられます。
ギターアンプのヒス
Denoise で床を下げてから、ゲートの Hold を長めに(150〜300 ms)。
Hold が短いとサステインの途中で閉じます。
仕様
| 項目 | 値 |
|---|---|
| フォーマット | VST3 (64-bit Windows) |
| レイテンシ(既定) | 0 サンプル |
| レイテンシ(先読み使用時) | 0 / 1 / 2 / 5 ms 相当のサンプル数 |
| レイテンシ(Denoise ON) | +1024 サンプル(48 kHz で 21.3 ms) |
| 対応サンプルレート | 44.1 / 48 / 88.2 / 96 / 176.4 / 192 kHz |
| 内部演算 | 64-bit 浮動小数点 |
実測値
| 項目 | 実測 |
|---|---|
| ±1dB揺らぎでの開閉回数(Hysteresis 3dB) | 1回(上限2) |
| 同 Hysteresis 0dB(比較用) | 24回 |
| トランジェント頭2msのピーク欠損(既定設定) | 0.000 dB |
| 参考: 先読みなし・Attack 50ms | 78.16 dB 欠損 |
| Hold 実測(200ms設定 − 1ms設定) | 199.0 ms |
| Denoise ON の報告レイテンシ / 実測 | 1024 / 1024 サンプル |
| プロファイル未学習時の透過性 | 測定床(−140 dBFS)以下 |
| 定常ノイズの低減量(Reduce 20dB) | 13.45 dB |
| 楽音(−20dBFS の1kHz)のレベル変化 | −0.030 dB |
| CPU負荷(デノイザOFF / ON) | 0.147 % / 0.681 % |
全文は qa/gate_v0.1.0_report.md(開発リポジトリ)にあります。
FFTについて
デノイザは1024点の窓・50%重ね・sqrt(Hann)の分析合成です。
プロファイルを学習していない状態では、入出力は測定床まで一致します
(分析窓と合成窓の積が重なりの和で1になる組み合わせ)。
FFTは外部ライブラリではなく自前実装で、素朴な直接DFTと突き合わせて検証しています。
速い実装同士を比べても、同じ高速化を共有していれば同じ間違いをしていても一致するためです。
よくある質問
Q. ゲートがパタパタします
A. Hyst を上げてください。それがこのノブの仕事です。
それでも直らなければ、DETECTOR の HPF/LPF で検波の帯域を絞ってください。
Q. キックでタムのゲートが開きます
A. 設定ではなく検波の問題です。HPF を上げて、Listen で確認してください。
Q. Denoise をONにしたら音が遅れました
A. 仕様です。1024サンプル(48kHzで21.3ms)。ホストの遅延補正が効いていれば
ズレませんが、モニタリング中は遅く感じます。かけ録りには向きません。
Q. Reduce を20dBにしたのに20dB減りません
A. 仕様です(上記)。ノブは1ビンあたりの下限で、広帯域のRMS低減量ではありません。
Q. デノイザをかけると音が「シュワシュワ」します
A. ミュージカルノイズです。Smooth を上げてください。
それでも残るなら Reduce を下げてください — 消しすぎです。
Q. Learn を押しても何も変わりません
A. パネル下部に学習フレーム数が出ます。0のままなら Learn が押せていません。
数字が出ているのに効かないなら、学習した区間に消したいノイズが入っていません。
Q. De-Esser や Multiband Comp と併用できますか
A. できます。順序は Gate → EQ → コンプ が普通です。
ノイズを残したまま圧縮すると、ノイズごと持ち上がります。
試用と ライセンス
初回使用から 31日間、すべての機能が使えます。
期間が終わると、プラグインは読み込まれ、設定も残ったまま、音を素通しにします
(名前の横に TRIAL ENDED と出ます)。**セッションの途中で音が消えたり、ノイズが
入ったりすることはありません。**
ライセンスは15種すべてに共通です。入力するには、どれか1つのプラグインで
「i」ボタン → Paste licence key(キーをクリップボードにコピーした状態で)。
- オフラインで動作します。インターネット接続もアカウントも不要です
- あなたの所有する台数に制限はありません(ハードウェアには紐づきません)
ライセンス・連絡先
同梱の licenses/ を参照してください。
不具合報告・要望は README.txt の連絡先へ。
通知やアップグレード勧奨の画面は入れていません。今後も入れません。