Dynamic EQ — マニュアル
Essential Studio Suite / VST3 / Windows 64-bit
これは何か
4バンドのイコライザですが、各バンドがその帯域が鳴ったときだけ動きます。
普通のEQは常にかかっています。「サビでだけ刺さる 3kHz」を静的EQで削ると、
刺さっていない場所まで一緒に暗くなります。このEQは、
その帯域が閾値を超えたときだけ設定した量まで動き、超えなければ何もしません。
Range を 0 dB にしたバンドは、静的なEQと完全に一致します。
動的な部分と静的な部分は同じフィルタ設計を通っているので、
「動いて 6 dB 上がったバンド」は「静的に 6 dB 高いバンド」と厳密に同じです。
インストール
- ZIP を展開する
dyneq.vst3フォルダごと、次の場所へコピーする
```
%LOCALAPPDATA%\Programs\Common\VST3
```
- DAW を起動して再スキャン
アンインストールはこのフォルダを削除するだけです。レジストリには何も書きません。
パラメータ(各バンド共通・4バンド)
| ノブ | 範囲 | 説明 |
|---|---|---|
| Freq | 20 Hz 〜 20 kHz | バンドの中心周波数 |
| Gain | −18 〜 +18 dB | 静的なゲイン。常にかかる |
| Q | 0.3 〜 18 | ベルの幅 |
| Thresh | −60 〜 0 dB | ここを境に動きはじめる |
| Range | −18 〜 +18 dB | 動的なゲイン。0 なら静的EQ |
| Atk | 0.1 〜 300 ms | 動きはじめる速さ |
| Rel | 10 ms 〜 3 s | 戻る速さ |
| Mode | Above / Below | 閾値の上で動くか、下で動くか |
| On | Off / On | バンドの有効・無効 |
さらに全体の Output(−18 〜 +18 dB)と Auto Gain(初期値 Off)。
Auto Gain
静的なカーブが足した(削った)ラウドネスを打ち消します。
EQで持ち上げると音は大きくなり、人は大きい方を良いと判断します。ONにすると
出力ラウドネスが動かなくなるので、フィルタが何をしているかだけが聞こえます。
実測(ピンクノイズ、EBU R128 積分):
| 操作 | OFF | ON |
|---|---|---|
| バンド1 ゲインを全域スイープ | 6.15 LU | 0.26 LU |
| バンド2 ゲイン | 7.70 LU | 0.10 LU |
補償するのは静的な分だけです。各バンドのゲインには2つの成分があり、
**あなたが設定した静止ゲイン(Gain)は既知で厳密に打ち消せますが、ディテクタが
加える変動分(Range)は信号次第で、パラメータからは導出できません。**
分かる分を補償し、分からない分は放置するのが正しい答えです。出力を追って残りも
捕まえようとすると、1台目のコンプと戦う2台目のコンプになります。
補償量は ±12 dB で頭打ち。初期値が Off なのは意図的で、ONのEQは何かを
大きくすることができません。カーブ表示は補償を含みます。
Gain と Range の違いが要点です
- Gain は常にかかる。これだけ使えば普通のEQ
- Range は閾値を超えたときだけ、そこまで動く
両方使えます。「常時 −2 dB、鳴ったときはさらに −6 dB」のような設定が普通です。
Mode: Above と Below
- Above(通常): レベルが上がると動く。刺さり・溜まりを抑える
- Below: レベルが下がると動く。上方エキスパンション —
静かな部分にだけ空気感を足す、といった使い方
Q は検波器の幅も決めます
バンドの検波器は同じ周波数・同じQから作られます。表示されている場所と
動く場所がズレないための設計です。
ただし検波側のQには 0.7 の下限があります。Q 0.3 のベルは4オクターブ幅で、
同じ幅の検波器は隣の帯域まで聞いてしまい、「7 kHz のバンドがキックに反応する」
ことになるためです。ベルを広げるのは自由ですが、検波器はそこまで広がりません。
表示
上の画面は周波数特性です。背後の淡い山が入力のスペクトラム、
手前の線がいまの応答で、線と目盛りは音を処理しているのと同じ係数から
計算しています。
各バンドのマーカーは、静止位置(静的なゲイン)から現在位置へ線が伸びます。
この線の長さがダイナミクスの動作量です。動いていなければ、そのバンドは
Thresh に届いていません。
Auto Gain がオンのとき、カーブ表示は補償を含みます — ベルを持ち上げると
残り全体が下がって見えるのはそのためです。
使いかた
ボーカルの刺さり
Freq 3 kHz / Q 3 / Gain 0 / Range −6 dB / Thresh −28 dB / Atk 3 ms / Rel 120 ms
刺さった瞬間だけ引きます。刺さっていないところは素通しです。
De-Esser との違いは、任意の周波数に置けることと、4バンド同時に使えることです。
低域の溜まり
Freq 120 Hz / Q 1.5 / Range −8 dB / Thresh −24 dB / Atk 20 ms / Rel 250 ms
常時カットすると細くなる素材で、鳴ったときだけ引きます。
静かなところにだけ空気を足す
Freq 10 kHz / Q 1 / Range +4 dB / Mode Below / Thresh −32 dB
大きい部分はそのまま、小さい部分だけ持ち上がります。
マスターで使う
Range は ±3 dB 程度から。動いている量は各バンドの左に数字で出ます
(カーブ上のマーカーも静止位置から現在位置へ線を引きます)。
±1 dB も動いていないなら、その設定は何もしていません。
仕様
| 項目 | 値 |
|---|---|
| フォーマット | VST3 (64-bit Windows) |
| レイテンシ | 0 サンプル(最小位相) |
| バンド数 | 4(すべて同一のピーキングベル) |
| 対応サンプルレート | 44.1 / 48 / 88.2 / 96 / 176.4 / 192 kHz |
| 内部演算 | 64-bit 浮動小数点 |
実測値
| 項目 | 実測 |
|---|---|
| Range=0 時の応答と理論値の差 | 最大 0.0000 dB(許容 ±0.1) |
| 全バンド Gain=0・Range=0 | ビット一致 |
| Attack 実測(1 / 10 / 50 ms) | 許容 ±20% 内 |
| Release 実測(50 / 200 / 1000 ms) | 許容 ±20% 内 |
| 検波器の帯域外阻止量(4kHz バンドに対する 1kHz) | 12 dB 以上 |
| 閾値通過時の包絡線の不連続 | −82.8 dBFS(上限 −60) |
| CPU負荷(4バンド全て動作中) | リアルタイムの 0.69 % |
全文は qa/dyneq_v0.1.0_report.md(開発リポジトリ)にあります。
検波はモノ和で行っています
4バンドそれぞれにバンドパス・整流器・包絡線を左右2系統持たせると
CPU が 1.15%(社内基準 1%)になり、モノ和なら 0.69% でした。
代償: 片チャンネルだけに振り切った音は、センターにある同じ音より
6.02 dB 低く検出されます(実測値。理論値も 6.02 dB)。
ハードパンされた素材でバンドを動かしたいときは、その分だけ Thresh を下げてください。
左右のゲインは常に同じです。バンドが定位を動かすことはありません。
閾値の前後はなめらかです
エンゲージ量は 6 dB のニー幅にわたる滑らかな曲線で、
両端で傾きが 0 になります。閾値をまたぐときにカチッと切り替わりません。
よくある質問
Q. Range を上げても何も起きません
A. Thresh が高すぎませんか。バンドの左の数字が動いていなければ、
検波器が閾値に届いていません。
Q. 表示と違う周波数が動いている気がします
A. 検波器はベルと同じ周波数・同じQから作られているので、原理的にはズレません。
ただし Q を 0.7 未満にすると、ベルだけが広がって検波器は 0.7 のままです。
Q. 静的EQとして使えますか
A. はい。全バンドの Range を 0 にすれば、静的なEQと完全に一致します。
Q. ハードパンされた音に反応が鈍い
A. 仕様です(上記)。Thresh を 6 dB 下げてください。
Q. De-Esser とどちらを使うべきですか
A. サ行だけなら De-Esser のほうが設定が速いです。
周波数を選びたい、複数バンド要る、という場合はこちらです。
試用と ライセンス
初回使用から 31日間、すべての機能が使えます。
期間が終わると、プラグインは読み込まれ、設定も残ったまま、音を素通しにします
(名前の横に TRIAL ENDED と出ます)。**セッションの途中で音が消えたり、ノイズが
入ったりすることはありません。**
ライセンスは15種すべてに共通です。入力するには、どれか1つのプラグインで
「i」ボタン → Paste licence key(キーをクリップボードにコピーした状態で)。
- オフラインで動作します。インターネット接続もアカウントも不要です
- あなたの所有する台数に制限はありません(ハードウェアには紐づきません)
ライセンス・連絡先
同梱の licenses/ を参照してください。
不具合報告・要望は README.txt の連絡先へ。
通知やアップグレード勧奨の画面は入れていません。今後も入れません。