StemStudio

Hard Clipper — マニュアル

Essential Studio Suite / VST3 / Windows 64-bit


これは何か

しきい値を超えた波形の頭を切り落とすクリッパーです。

リミッタと違って先読みも時定数もありません。超えた瞬間に切ります。

そのぶん、リミッタでは避けられない「アタックが甘くなる」現象が起きません。

キックやスネアの頭を残したまま音量を稼ぎたいときに使います。

しきい値を超えない素材は素通りです。

OS を Off にしていれば、出力は入力と1ビットも同じです。


インストール

  1. ZIP を展開する
  2. clipper.vst3 フォルダごと、次の場所へコピーする

```

%LOCALAPPDATA%\Programs\Common\VST3

```

  1. DAW を起動して再スキャン

アンインストールはこのフォルダを削除するだけです。レジストリには何も書きません。


パラメータ

ノブ範囲初期値説明
Thresh−24 〜 0 dB−3 dBここを超えた分を切り落とす
Knee0 〜 100 %0 %しきい値付近の角を丸める量
OSOff / 4x / 8x4xオーバーサンプリング
Output−12 〜 +12 dB0 dB出力の音量

Knee — 0% が「本来のクリッパー」です

0% は文字どおり角のあるハードクリップです。 しきい値までは何もせず、

超えたところで水平に切ります。パチッとした質感が要るならここです。

上げていくと、しきい値の手前から徐々に曲がりはじめます。

50% なら Thresh −6 dB のとき −9 dB あたりから丸まりはじめます。

丸めかたは二次曲線で、接続点で傾きが一致しています(数学の言葉で C1 連続)。

折れ点で傾きが跳ぶと、そこが耳につく高次の歪みになります。

実測での傾きの跳びは 0.00016(許容 0.01)です。

どちらが良いという設計上の答えはありません。 素材で選んでください。

OS — 4x が初期値、Off も残してあります

クリップは高調波を作ります。オーバーサンプリングをしないと、

サンプリング周波数の半分を超えた成分が折り返して元の音と無関係な音程

なって戻ってきます。実測では OS Off で −47.8 dBc の折り返しが出ます。

設定折り返し(1kHz を 12dB 叩き込んだとき)CPU
Off−47.8 dBc0.07 %
4x−77.5 dBc0.41 %
8x−89.9 dBc0.77 %

2x はありません。 −62.1 dBc で、社内基準の −70 dBc に届かなかったためです。

「オーバーサンプリングを入れたのに基準を満たさない設定」を選べるようにするのは

不親切だと判断しました。

それでも Off を残しているのは、フィルタを通さない音に価値があるからです。

オーバーサンプリングのフィルタは、波形の立ち上がりの手前に小さな

波を作ります(プリリンギング)。キックのアタックがわずかに変わります。

気にならない人のほうが多いはずですが、気になる人には Off があります。

OS を切り替えてもレイテンシは 73 サンプルのまま変わりません。

演奏中に切り替えても DAW の遅延補正がずれません。


表示

上のグラフは入力(横)と出力(縦)の関係です。斜めの細い線が「何もしない」線、

太い線が実際の伝達特性で、平らになったところから上が切られています

Thresh を下げれば平らな部分が内側に広がり、Knee を上げれば角が丸くなります。

グラフが正方形なのは、45度からのずれこそが読み取るものだからです。

横に引き伸ばした絵では、強い折れ曲がりも緩やかな曲線に見えてしまいます。


使いかた

キックとスネア

Thresh を下げていって、頭が「詰まった」と感じる少し手前で止めます。

Knee 0% / OS 4x から始めてください。

リミッタと交互に試して、アタックがどちらで残るかを比べるのが早道です。

マスターの最後の 1〜2 dB

Thresh −1 dB / Knee 30 〜 50% / OS 8x。

リミッタを目一杯まで追い込むより、リミッタを軽くしてから

クリッパーで最後を削ったほうが、平均音量に対して音が前に出ます。

クリッパーを先、リミッタを後に置いてください。逆にすると

リミッタが作った滑らかな包絡線をクリッパーが切り返してしまいます。

歪みとして

Thresh −12 dB 以下 / Knee 30% / OS 8x / Output で音量を戻す。

このあたりからは音量調整ではなく音作りです。8x を推奨します。


仕様

項目
フォーマットVST3 (64-bit Windows)
レイテンシ73 サンプル(OS 設定によらず一定)
対応サンプルレート44.1 / 48 / 88.2 / 96 / 176.4 / 192 kHz
内部演算64-bit 浮動小数点

実測値

項目実測
クリップ開始点(Thresh −12 / −6 / −3 dB)すべて誤差 0.00 dB(許容 ±0.05 dB)
ソフトニーの傾きの跳び(C1 連続の確認)0.00016(許容 0.01)
ニー下端より下でのカーブの恒等性0.000000000000
折り返し(OS 4x / 8x)−77.5 / −89.9 dBc
OS Off でしきい値以下ビット一致
OS 4x / 8x でしきい値以下の振幅変化0.0007 / 0.0012 dB
レイテンシ(全 OS 設定)73 サンプル(報告値と実測が一致)
CPU負荷(4x / 8x / Off)0.41 / 0.77 / 0.07 %
ジッパーノイズ(Output 全域スイープ)−80.4 dBFS

全文は qa/clipper_v0.1.0_report.md(開発リポジトリ)にあります。

なぜ OS Off でも 73 サンプル遅れるのか

OS を切り替えたときにレイテンシ報告が変わると、DAW 側の遅延補正が

古い値のまま残ることがあります。つまみを回しただけで位相がずれるのは

事故なので、一番遅い設定(8x)の値に固定しました。

低い倍率では、足りないぶんを素の遅延で埋めています。

フィルタを通さないので、プリリンギングは増えません。

8x のフィルタ遅延は端数(整数サンプルではない)なので、

その端数はオールパスフィルタで正確に埋めています。


よくある質問

Q. リミッタとどう違いますか

A. リミッタは先読みして「これから超えるから今から下げる」と動きます。

クリッパーは超えた分をその場で切ります。アタックが残るのはクリッパー、

歪まないのはリミッタです。

Q. 2x がないのはなぜですか

A. 折り返しが −62.1 dBc で、社内基準(−70 dBc)を満たせませんでした。

選べる設定はすべて基準を満たしています。

Q. OS を切り替えると音が変わります

A. 仕様です。折り返しの量が変わります。Off ↔ 4x の差が最も大きいはずです。

Q. Knee を上げると音量が下がります

A. しきい値の手前から曲がりはじめるためです。Output で戻してください。

Q. Thresh 0 dB にしても何も起きません

A. 0 dBFS を超える素材がないなら、それは正常です。

OS Off なら出力はビット単位で入力と同じです。

Q. レイテンシ 73 サンプルは減らせませんか

A. OS 設定によって変わってよいなら減らせますが、上記の理由で固定しています。



試用と ライセンス

初回使用から 31日間、すべての機能が使えます。

期間が終わると、プラグインは読み込まれ、設定も残ったまま、音を素通しにします

(名前の横に TRIAL ENDED と出ます)。**セッションの途中で音が消えたり、ノイズが

入ったりすることはありません。**

ライセンスは15種すべてに共通です。入力するには、どれか1つのプラグインで

「i」ボタン → Paste licence key(キーをクリップボードにコピーした状態で)。

ライセンス・連絡先

同梱の licenses/ を参照してください。

不具合報告・要望は README.txt の連絡先へ。

通知やアップグレード勧奨の画面は入れていません。今後も入れません。