Chorus — マニュアル
Essential Studio Suite / VST3 / Windows 64-bit
これは何か
数ミリ秒のディレイの長さを、ゆっくりした振動で動かしているだけのプラグインです。
パネルの他のすべては、この一文の帰結です — どれだけ長く、どれだけ大きく、
どれだけ速く、何個のコピーを、左右でどれだけ違えて。
Delay を 2〜3 ms まで下げて Feedback を足せばフランジャーになります。
コーラスとフランジャーは同じ回路で、置き場所が違うだけです。
インストール
- ZIP を展開する
chorus.vst3フォルダごと、次の場所へコピーする
```
%LOCALAPPDATA%\Programs\Common\VST3
```
- DAW を起動して再スキャン
アンインストールはこのフォルダを削除するだけです。レジストリには何も書きません。
パラメータ
| ノブ | 範囲 | 説明 |
|---|---|---|
| Rate | 0.05 〜 10 Hz | 揺れの速さ |
| Depth | 0 〜 100 % | 揺れの大きさ(下記の上限あり) |
| Delay | 1 〜 30 ms | 揺れが乗っているディレイの長さ |
| Fdbk | −90 〜 +90 % | 戻し量。符号が音を決めます |
| Voices | 1 / 2 / 3 | コピーの数 |
| Spread | 0 〜 100 % | 左右の揺れをどれだけずらすか |
| Mono Safe | Off / On | 左右のずれを半分に抑える |
| Tone | 2 〜 20 kHz | ウェット側だけのローパス |
| Mix | 0 〜 100 % | 原音との混ぜ具合 |
| Output | −18 〜 +18 dB | 出力 |
Depth には上限があります(これがこの製品の設計の中心です)
深い変調を不快にするのは変位そのものではなく、変位が生むピッチの揺れです。
そしてピッチの揺れは 変位 × レート で決まります。
ミリ秒で固定した深さは、0.3 Hz なら快適で 6 Hz では酔います。
多くのコーラスに「Rateノブの上端に誰も使わない領域」があるのはそのためです。
このコーラスは、Rate がいくつでもピーク・ピッチ偏移が35セントを超えないよう
変位を抑えます。Depth は約1.1 Hz までフルの6msを保ち、
レートが上がるにつれて静かに返します。
| Rate | 変位 | ピッチ偏移(実測) |
|---|---|---|
| 0.1 Hz | 6.00 ms | 3.26 cent |
| 0.6 Hz | 6.00 ms | 19.71 cent |
| 2.0 Hz | 3.25 ms | 35.72 cent |
| 5.0 Hz | 1.30 ms | 35.72 cent |
| 10.0 Hz | 0.65 ms | 35.71 cent |
Depth 100% にしたのに速い側で浅く聞こえるのは、故障ではなく設計です。
パネル上部の帯に、いま許されている変位がミリ秒で出ています
(点の移動幅がそのまま変位です)。
両方のノブのどの位置も、誰かが実際に選びうる設定になっています。
Spread と Mono Safe
Spread 100% は左右の揺れを半周期ずらします。これが最も広い設定です。
モノにまとめたとき、その分だけ打ち消しが起きます — 実測で 1.2 dB。
これは故障ではなく、広げることの代償です。
Mono Safe はずれを半分に抑えます。モノでの損失は小さくなり、
そのぶん広がりも減ります。**放送やクラブなど、モノで再生される可能性がある場所へ
出すときのスイッチ**です。
Voices
1個は素直、2個で厚み、3個で「アンサンブル」になります。
ボイスは周期上に等間隔ではなく、ボイス数+1 で割った位置に置いています。
等間隔にすると、2ボイスと Spread 100% の組み合わせで**左右が完全に同一になり、
最も広いはずの設定がモノになります**(開発中に実際に起きて、測定で見つけました)。
Feedback の符号
- 正: 倍音が強調され、フランジャーの「笛」に近づく
- 負: 中心が抜けて、空洞のような響きになる
Delay を 2〜4 ms にすると、この違いがはっきり出ます。
表示
上の窓は LFO の1周期です。横軸が1周期ぶんの時間、縦軸が遅延時間(ms)で、
曲線1本が1ボイス。明るい曲線が左チャンネル、暗いほうが右チャンネルで、
この2群の横ずれが Spread です。Mono Safe を入れるとずれが半分になります。
ボイスを増やせば曲線が増えます。
縦に走る細い線がいまの位置で、点が各ボイスの現在の遅延です。
右上の数値は実際の振れ幅(p-p)で、Depth の設定値ではありません —
Rate を上げるとピッチ変化の上限に当たって振れ幅が削られるので、
Depth 100% でも 6 ms 出ないことがあります。その差が読める場所はここだけです。
使いかた
80年代のコーラス
Rate 0.5 Hz / Depth 45% / Delay 12 ms / Voices 2 / Spread 70% / Tone 9 kHz / Mix 40%
Tone を下げているのがポイントです。当時の回路は上の帯域を通せませんでした。
厚いパッド
Rate 0.35 Hz / Depth 70% / Delay 18 ms / Voices 3 / Spread 100% / Mix 50%
モノで確認するなら Mono Safe を入れてください。
フランジャー
Delay 2 ms / Rate 0.25 Hz / Depth 60% / Feedback 70% / Voices 1 / Mix 50%
Feedback を負にすると別物になります。両方試してください。
ビブラート
Mix 100%(原音なし)/ Rate 5 Hz / Depth 100% / Voices 1
原音を混ぜないとコーラスではなくビブラートになります。
Rate 5 Hz でも上限が効いているので、変位は 1.3 ms に抑えられます。
仕様
| 項目 | 値 |
|---|---|
| フォーマット | VST3 (64-bit Windows) |
| レイテンシ | 0 サンプル |
| 補間 | 4点 Catmull-Rom(3次) |
| 最大ボイス数 | 3 |
| 対応サンプルレート | 44.1 / 48 / 88.2 / 96 / 176.4 / 192 kHz |
| 内部演算 | 64-bit 浮動小数点 |
実測値
| 項目 | 実測 |
|---|---|
| 変調中の帯域外スプリアス | −106.9 dBFS(基準 −90) |
| 同・線形補間にした場合 | 25.6 dB 悪化 |
| Rate 0.5→5 Hz 切替時の段差(定常時比) | 0.32 dB |
| Spread 100% のモノ和の損失 | −1.22 dB |
| Spread 100% / Mono Safe ON | −1.11 dB |
| Spread 100% の左右差信号(Mid比) | −4.87 dB |
| 60秒再生の前半と後半の平均ピッチ差 | 0.000 cent |
| 60秒後のLFO位相と理論値の差 | 0.00000 度 |
| CPU負荷(3ボイス) | リアルタイムの 0.65 % |
全文は qa/chorus_v0.1.0_report.md(開発リポジトリ)にあります。
補間について
ディレイの読み出し位置は4点 Catmull-Rom で求めています。
リニア補間は、動く読み出し位置に対しては毎サンプル応答が変わるコムフィルタで、
そこに残る誤差が「ザラつき」として聞こえます。
同じ条件でリニア補間に落とすと帯域外スプリアスが 25.6 dB 悪化します。
これは主張ではなく、レポートに残してある測定値です。
Rate を動かしてもクリックしません
LFOは位相アキュムレータで、Rateは増分しか変えません。位相そのものを
書き換えないので、不連続は原理的に生じません。
ただし Rate を変えると上限による変位も変わるので、そちらは20msで
なめらかに追従させています(していなかった版では、0.5→5 Hz の切替で
信号自身の段差より18.7 dB 大きいクリックが出ました)。
よくある質問
Q. Depth を最大にしても浅いです
A. Rate が速いからです(上記)。パネル上部の帯に、いま許されている変位が
ミリ秒で出ています。深くしたければ Rate を下げてください。
Q. モノにすると効果が減ります
A. 仕様です。Spread 100% で 1.2 dB。Mono Safe で軽減できます。
Q. フランジャーとして使えますか
A. Delay を 2〜3 ms、Feedback を 60〜80% にしてください。それがフランジャーです。
Q. ビブラートにできますか
A. Mix 100% にしてください。原音がなくなればビブラートです。
Q. 音が濁ります
A. Voices を減らすか、Mix を下げてください。3ボイス・Mix 100% は
原音のない状態で3つの揺れるコピーを重ねているので、濁って当然です。
Q. 長く再生するとピッチがずれていきませんか
A. ずれません。60秒再生の前半と後半で平均ピッチ差は 0.000 cent です。
試用と ライセンス
初回使用から 31日間、すべての機能が使えます。
期間が終わると、プラグインは読み込まれ、設定も残ったまま、音を素通しにします
(名前の横に TRIAL ENDED と出ます)。**セッションの途中で音が消えたり、ノイズが
入ったりすることはありません。**
ライセンスは15種すべてに共通です。入力するには、どれか1つのプラグインで
「i」ボタン → Paste licence key(キーをクリップボードにコピーした状態で)。
- オフラインで動作します。インターネット接続もアカウントも不要です
- あなたの所有する台数に制限はありません(ハードウェアには紐づきません)
ライセンス・連絡先
同梱の licenses/ を参照してください。
不具合報告・要望は README.txt の連絡先へ。
通知やアップグレード勧奨の画面は入れていません。今後も入れません。